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想像の向こう側 残欠よもや話

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寒いときって太陽も出ずに暗くて、空気も冷えて
自分の気持ちもなんか冷え冷えしているからか
画像が寒々しい。
よそ様の明るく楽し気なインスタを見ていると
余計に哀しい気持ちになってしまう、そんな今日この頃です。

古美術の世界では「無い」ところへ想像を働かすのが粋とあって
仏像や陶磁器の無くなってしまったところに思いを馳せ
夢とロマンを膨らませるのでございます。

数年前の露店でお友達のお店でしゃべっていたところ
誰もが知ってるであろう大女優さんが覗かれ
そのお店の仏像の「手」を手の平に乗せ
目線くらいのところで掲げながらうっとりと御覧になっておりまして
お店の奥さんが「仏像お好きですか?」かなんかそんなことを言うと
「わたし、本当は足が好きなんです」と。
へーそんなんですね。なんて会話をしたのを思い出します。

無いところへの郷愁もあるけれど
残っているところへの思い入れもあるんだろうなあ
しらんけど。

欠けてしまったものを見るとき
思い出すことがあります。
若いころに働いていた病院で
近くの工場の作業員のおじちゃんが指を挟まれてちぎれ
どす黒く変わった指を持って受付へ来られました。
救急もやっている病院だったけれど小さな病院だったし
診療時間外だったので、受付の私と仮眠中のドクターしかおらず
大急ぎでドクターを起こして処置してもらったものの
結局残念ながら指はつきませんでした。
数か月たって症状固定でもう通院しなくても良い段階になりましたが
おじちゃんは毎週診察へ来ていました。
ある日、おじちゃんが帰ったあとにドクターが私に言いました。

「あんな、あるもんの傷みはなんとかできるけど
無いもんの傷みはわしにはなんともできひんのや」

大きく欠けた陶磁器を見ると
なぜか30年も前のことですが思い出します。

はい、そして欠けた花活けです。
欲しい方、もちろん販売します。



by antiquekanon | 2024-02-08 16:44 | **やきもの | Comments(0)
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